【Q34】80代の実家の母は、「タダ」という言葉に弱いです。
家にはタッパが山のようにあるのに、デパートの催し場で無料配布していると、30分ぐらい並んで、もらってきたりします。
町で配っているティッシュは必ずもらいます。かつては、同じ道を、2回ぐらいわざわざ通って、もらっていたようです。
最近は足腰がさすがに弱くなり、今年にはいって2回も同じ道を回ってまでは、もらわなくなりました。ところが、昨日一緒に買い物に行ったとき、ティッシュを配っている人に「もう1つちょうだい」と言っていて、愕然としました。恥ずかしかったです。
ほかにも、商店街などで配っている「粗品」のマグカップ、新聞屋さんが持ってくるお年賀のタオルも、そのままためています。
さすがにあふれて困るので、わたしが捨てようとしたら、「物を捨てるなんて」と、ひどい剣幕に。
もういやになりました。
【A】チープないただき物の価値を親子で実感しましょう。
チープないただきもので実家が散らかっていて、暗い気持ちになっている娘さんのお気持ち、お察しいたします。
気を付けなければいけないのは、その、チープな物の価値のレベルです。
たとえば、ティッシュやタッパのように、100円ショップなどで、どこでも手に入る物は、娘さん世代にとっては100円以上の価値はありません。
それどころか、捨てたり、しまったりと、手間のほうがかかるので、マイナスだということを実感されているのだと思います。
ところが、80代のお母さまは、物がなかった時代をいきていらっしゃいましたので、物があるだけでプラスの意味をなし、十分価値があるのです。それが、ティッシュやタッパのような、使えそうなものなら、なおさらです。
タダというだけで、もっと価値は上がります。
そのうえ、たとえ使わなくても、持っていることに価値があると考えているのです。
ですから、お母さまが、タダの物をもらうのは、タダがお得だという思い込みがあるからなのです。
その価値観をひっくりかえすということは、うんと損をしているとわかっていただくしかないのですが、そう簡単にはいきません。
いま、体力に不安があるのなら、放っておくと、なおさら物をためる心配があります。
ここは面倒でも一つずつ理解してもらいましょう。
このときに、健康、お金で損をするという「二大話」を出すのが、王道です。
足腰が弱くなったということですので、
「タッパやティッシュ1つでも、荷物をふやすと、重たくなって、ほかの買い物ができなくなる」
と言ってみたり、
「プラスティックのゴミは、将来は有料になるから増やさないほうがいい」
「ただのタッパを入れる収納棚を買うほうが高くつく」
といった、「ただより高い物はない」という話をしてみましょう。
そうはいっても、価値観を変えるということはできないので、すぐに理解してもらえなくても、子世代は、ストレスをためないようにしましょう。
なにしろ、もらったことで得したということを味わうのは、お母さまにとっては楽しいことだからです。
タダで物をもらう以外にも、ほかの楽しい趣味などに没頭できるようにしていけるように、サポートできるといいと思います。
今の高齢の女性が若い頃生きた時代は、自分のために、なにかを楽しむということが許されない雰囲気がありました。
物を得ることが楽しみだった時代が長かったのです。
ですから、ほかに楽しいことや、やりたいことがあれば、そちらに集中することで、タダのものをもらう満足を得てしまうことが減る可能性はあります。
世代が違うと理解が難しいですが、ティッシュをもらう程度のささやかな行為も、お母さまにとっては楽しいことで、時代性をはらんでいるのです。
注意しなければいけないのは、タダの物をもらうクセがある人のなかには、高額な悪徳商法にかかる人がいることです。
おかしな物や不要な物を大量に買っていたら、自治体などにSOSを出すなど、ただちに対処をしなければなりません。
高額な物を買うときには、相談してねと伝えて、高額な商品を買って困った人の話などをしておくのも、これからは必要かもしれません。
現時点では、80代の女性で、お元気で、悪徳商法にひっかからない知性があり、ティッシュやタッパをもらうだけなら、被害はないのですから、前向きにとらえてもいいと思います。
そう理解するだけでも、娘世代のストレスは減るでしょう。
余ったものは、捨てなくてもいいので、事務的に一時保管として分けていき、本当に欲しい物を買うように話をしていくだけでも、見守りになりますね。
片づきますように。(渡部亜矢)